本を片手に考えた、あんなことやこんなこと

本を読むことが大好きな30代女子(一児の母)の日記です。

きっと心が軽くなる

さっき半分くらいまで書いていたのに、操作ミスにより消えたああああーー

 

熱量減少気味ですが、改めて書きたいと思います。

久しぶりの投稿です。すいません。

 

 

山口慎太郎さんの『「家族の幸せ」の経済学』を読みました。

https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334044220

 

結婚、出産、育休、父親の育児参加、保育園、離婚など、家族にまつわる定説(?)を統計データやシミュレーション、実証研究などから検証した本です。

 

 

例えば、「母乳育児は子どもの知能の発達にいいの?」とか「3年間親元で子育てした方がいいの?」とかよく言われる話をデータで検証しています。

 

 

この本を手にとったのは、知人が某新聞の書評を紹介してくれたからだったと思いますが、当時(読んだのは半年くらい前)子育て真っ最中だった私にとってはとても興味がある内容でした。

というのも、母乳よりミルク中心で育てていましたし、息子を6ヶ月で保育園に入れることになっていたので、自分で決めたものの大丈夫かなという思いが常に頭をよぎっていたのです。

 

結果的にこの本はその心配を払拭してくれることになったわけですが、他にも興味深い内容がいくつかあったので、引用したいと思います。

 

(育休3年制の導入で女性の行動がどう変わるかをシミュレーションした研究を説明している段落から)

ある年に主婦であった人が、翌年、非正規の仕事に就く確率は10パーセントほどですが、これが正社員となると わずか1パーセントにとどまります。本人のスキルや雇用形態の志望といった要素を考慮しても、正社員として就業するのはかなり難しいという結論は変わりませんでした。(第3章 育休の経済学 p.132)

 ⇨これは詳しくデータを見たい結果ですが(前提がよく分からないので)、正社員と非正規の壁の厚さを物語っている結果のように見受けらるの。こうしたデータが世に出ていくことで、正規と非正規の壁や女性の収入の少なさの構造的要因についてスポットが当たってもっと社会で議論されて欲しい。

 

 (ノルウェーの1993年の育児休業制度改革前後で父親の育休取得率がどのように変化したかの研究結果から)

 1993年の育休改革直後に育休を取ったのは一部の勇気あるお父さんたちでした。こうした勇気あるお父さんが、同僚あるいは兄弟にいた場合、育休取得率が11〜15パーセントも上昇したそうです。一方で、義理の兄弟や近所の人が育休を取った場合には、育休取得に影響を与えませんでした。自分が育休を取るかどうかは、近しい人からは影響を受けるけど、あまり関係の強くない他人からは影響を受けないようです。

 さらに興味深いことに、会社の上司が育休を取ったときの部下に与える影響は、同僚同士の影響よりも2.5倍も強いことがわかりました。(第4章 イクメンの経済学 p.152)

 ⇨今年の初め、環境大臣小泉進次郎さんが育休を取得すると発表して話題になりましたが、その後環境省内での育休取得にどのような変化があったのか、ぜひ山口さんに調査して欲しいところ。

 

とまあこんな感じでメイントピック(育休は伝染するなど)もそうでなかった話題(主婦が一年後に正社員になる比率)も統計データや実証研究、シミュレーションで検証するとなるほどと思える結果が多く、なかなか面白い本でした。

少し残念だったのは、こうした経済学的な見地からの研究結果に対して、山口さんの提言が、例えば「子育ての給付金を充実させるよりも保育施設を充実させるべき」など、これまでも散々各方面で言われている提言に収まっているのが多かった点。経済学的に合理的な説明がつくのに、なぜ政府は、自治体は、合理的な政策を実現させないのか、という点に切り込んで欲しかった(無茶振り?)。経済学者のみなさんには、もっと頑張って政策に食い込んで行って欲しいです。

山口さんの今後のご活躍に期待。

 

 

最後に。

母乳育児や保育園入園など、自分がした選択が果たして子供に取っていいことだったのかどうか悩む親は少なくないと思うけれど、この本を読めば自分のその悩みや不安から少し解放されて、きっと心が軽くなると思います。ポジティブに子育てできるようになるのではないかな。

 

 

そういう意味で、初めて親になる人にはぜひ読んで欲しい1冊でした。

ノムさんの三人の友 〜No.3 『「本当の才能」の引き出し方』〜

野村克也さんが亡くなった。

 

 

私にとって、物心ついた頃のプロ野球の監督といえば、

 

 

中日ドラゴンズ星野仙一監督

読売ジャイアンツ長嶋茂雄監督、

そしてヤクルトスワローズ野村克也監督だった。

 

 

当日は野球には興味がなく、ドラキチの父と祖父が見るプロ野球中継をぼーっと一緒に見るだけ。正直、子ども心には何が面白いのかわからなかったので、早くチャンネルを替えてほしかった。

 

 

それから20年ほど経って、今では年に数回、球場で野球を見るようになった。

 

 

遅ればせながら、野球の面白さを知った。

 

 

野球を球場で見始めたのは、今から2~3年前のことだが、それより少し前に、私は本屋でこの本に目をとめて、手に取っていた。(当時のメモに読了日は2015年10月8日とある。)

 

 

野村克也 著『「本当の才能」の引き出し方』

www.seishun.co.jp

 

 

いい素質を持っているのに伸び悩んでいた多くの野球選手たちを育て、才能を開花させてきた野村さんらしい、人の育て方、そして自分の磨き方が書かれている。

 

 

今、この本を引き出してまた読んでいる。

 

 

当時のドッグイヤーした箇所にはこんな文言があった。

 これもよく言う口ぐせの一つだが、「結果よりプロセスが大事」なのだ。
 いい結果に至ったプロセスが明快なら、また次もいい結果を出せる。しかし、適当なヤマカンで”当たった”結果には再現性がない。意味がないのである。

(中略)

 これは野球以外の仕事でも同じではないか。
 「結果さえ出せばいい」とばかりに、プロセスをおろそかにする風潮がないだろうか。
 しかし「なんとなく」「根拠なく」働いていたら、いくら結果を出しても、いま以上は望めない。私はそう考える。(P141-142)

 

 怒りに感情を左右されないためには、どうすればいいか?
 ”敏感さ”を磨くことだろう。
 怒りで我を忘れるのは、いわば鈍感である証拠だ。カッとなって平常心を失ったら自分の力は発揮できない。
 自分のキャリア、仲間からの信頼…‥。そうして積み上げたものを、怒りの感情は一瞬にして台無しにしてしまうことまである。
 そんな当たり前のことに気づけないのは、鈍感そのものだからである。
 では、敏感さとはどう磨けばいいのか、と言えば、それは「丁寧に仕事をする」ことしかないのではないだろうか。 (P178)

 

 自分の力を伸ばしたいと思うなら、正しい努力を続けることだ。
 目を、耳を、足を、鼻を、そして頭をどう使うのかーーーーー。
 常に正しく考えて、考えて、考え抜いて日々を歩んでいけば、ある日突然、以前とは違う景色が見えるときが、必ずくる。
 正しく握ったボールを、正しく投げれば、それは必ず伸びるのである。 (P183-184)

 

 

野村監督らしい発言。

 

 

そして私が最も印象に残ったのは、三人の友について書かれた箇所だ。

 

 何かの本で読んだ記憶があるが、人間は三人の友を持てば人生が幸福になる、という。
 一人は「人生の師となる友」。
 もう一人は「原理原則を教えてくれる友」。
 そして最後が「直言してくれる友」である。
 この三人の友が、人生を幸福にする”知恵”を授けてくれるというのだ。 

 

野村監督にとって、

「人生の師となる友」は、評論家の故・草柳大蔵さんだという。野村監督が引退して野球評論家になった際に講演の依頼が舞い込んだが、何を話せばいいかわからないと悩んだ。その際草柳さんにアドバイスをもらったという。

 

 

「原理原則を教えてくれる友」は、草柳さんから紹介されたような本、そして野球人としての経験。草柳さんからは「よき本に書かれた原理原則を学べ」と言われたという。

良書を読み、知識を積み上げれば、経験を語るにも深みが出る。または故事成語を語るにも血肉が宿る。「言葉の伝わり方が変わる」ということだ。(P132)

 

 

そしてそのあと、こう書いている。

 そして最後の友。「直言してくれる友」 だ。
 それは、いまも昔も、女房であるサッチーだろう。(P133)

 

 試合での采配はもちろん、テレビでの振る舞いまで、女房は何かと私に意見をくれる存在だ。
 もちろん、ほとんどダメ出しである。しかも歯に衣着せぬ全力の直球を投げつけて来る。荒れ球も多い。
 しかし、直言してくれる友こそ、大切にしなくてはならない存在なのだ。
 普通、人は耳に痛い話を聞きたくないが、言うほうだって言いたくないものだ。
 それを乗り越えて苦言を伝えるということは、本当に相手のことを思っていなければできないことである。
 また、耳の痛い話をされる側にとっても、「他人は何を、どう考えているか」という貴重な意見をもらえるチャンスでもあるのだ。
(P133-134) 

 

あなたには三人の友がいるだろうか。 

 

 

師と良書と幸代さんに囲まれて、野村監督の人生は幸せだっただろう。

 

 

 

ノムさんは天国でもサッチーと仲良く暮らしていきそうだ。

 

 

 

ご冥福をお祈りします。

 

本屋のある街に住みたい 〜No.2 『奇跡の本屋をつくりたい』〜

久住邦晴 著『奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの』

mishimasha.com

 

この本は今はなき書店主久住邦晴さんが、ご自身の死期を悟ったあたりから書き溜められていた遺稿をまとめたものです。 久住さんが二代目店主を務めたくすみ書房は札幌市琴似(その後大谷地に移転)にあり、2015年6月に惜しまれながら閉店。その後、「奇跡の本屋をつくりたい」と再起を目指した矢先、久住さんは病に倒れ、2017年に他界されました。

 

この本を読んだのは一昨年のことだったのですが、今なぜこの本を取り上げたかというと、

 

 

・先週の土曜日、近所の本屋で「閉店のお知らせ」を眼にする。

 

・昨日、鎌倉の松林堂書店さんの「閉店のお知らせ」ニュースを目にする。

 

 

というほんの数日の間に2つも近隣の本屋がなくなることが発覚したからです。街の本屋がなくなるニュースを目にするたびに、私は久住さんのこの本のことを思い出します。

 

 

ちなみに近隣の本屋は、私が今住んでいる街に引っ越してきた5年前は2つの本屋があったのですが、昨年の初めに1店舗なくなり、今回また1店舗なくなり、と自分の住む街に本屋がなくなることになりました。

 

 

鎌倉の松林堂書店さんは駅の東口のすぐそばにあったので、鎌倉散歩の前や帰る前に行っていました。鎌倉は昨年古書とリトルプレスの本屋さんである、books mobloさんも閉店してしまったので、一気に2店舗も減ってしまった・・・。寂しい。

 

 

 出版不況と言われて久しい日本、書店の数は20年前の半分以下。大きい書店ですら採算が取れず閉店するくらいですから、大手より資金力のない個人書店は経営が厳しいに決まっています。

 

 

久住さんの著書からも、毎月の取次への支払い、度々経験した品止め(取次から品が入ってこない、注文もできない状態)など、資金繰りの厳しさが伝わってきます。

 

 

そんな中、久住さんは売り上げを増やすため、お店を存続させるために、ユニークな取り組みをするわけです。

 

例えば、  

・売れない文庫フェア・・・いい本が多いのになぜか売れない、普通の書店では店頭に置かれもしない文庫のフェア(新潮文庫のランク下位の700点と地味だけど良書揃いのちくま文庫800点)。
新聞にも取り上げられ、その月の売上は前年の3倍を記録。その後、売れない文庫フェアは出版社を増やし、何回か開催されたとか。

 

・朗読会・・・店主自ら店内で朗読会を開催。

 

・「中学生はこれを読め!」・・・本屋の店主が中学生に勧めたい500冊と称して本を選定、札幌の書店組合の加盟店とともにフェアを開催。その後、「高校生」「小学生」シリーズにまで拡大した。

 

・ブックカフェ「ソクラテスのカフェ」・・・文芸書の古書を置いたブックカフェに、たびたびゲストを招いて文学談義を開催。その後、北大准教授の中島岳志氏(現在は東工大)との出会いを経て、大学教授を招いた「大学カフェ」開催に至る。

 

・くすみ書房友の会・・・会員制のファンクラブ。くすみ書房存続のための資金調達。特典として、店主が選書した本が年間4冊送られてくる。

 

・奇跡の本屋プロジェクト・・・全国で唯一の「中学生の本棚」と「高校生の本棚」がある本屋を作るために、クラウドファンディングを実施。見事目標額を達成した上に、多くの寄付や支援も集まったという。

 

 

 

本にはこれらの取り組みの詳細や、そこに至るご本人の思い、周囲の人とのやりとりが書かれているのですが、なにより久住さんの本や読書文化に対する愛情と信念、町の本屋としての誇りが垣間見えます。そして、その思いに共感した多くのお客さんの「この町の本屋を守りたい」という思いが伝わってきて泣けてきます。

くすみ書房に行ったことがないのが、なにより悔やまれます。

 

 

 

 

以前から常々「自分の住む町に本屋さんがあるということが大事」と思っていました。

 

 

本屋さんがあれば、大人から子供まで気軽に、意図せず自分の知らない世界に触れられる。これはインターネットの書店ではなかなか難しいことです。リアル店舗の強みです。

 

 

それに本屋さんや図書館が歩いて行ける距離にある街は、読書文化も育ちます。悩んだ時、行き詰まった時、ちょっと本を探しに行こう、とできるから。息抜きに、休日の楽しみに、ぶらりと立ち寄れるから。

 

 

 

本には奇跡を起こす力があります。

そのためには、ピンチになっても逃げたりあきらめないで、そのピンチに向きあい、どうすれば勝てるか考え、そして行動することです。

その行動のひとつに読書があるわけです。

「本にはすべての答えがあります」

 

皆さん方に本とのすばらしい出会いがあることを祈っております。

(本の中の久住さんの言葉)

 

 

やっぱり、できれば本屋さんのある街に住みたい。本屋さんのある街で子育てをしたい。

 

 

 

この3月で、私の住む街から本屋がなくなります。その後のテナントにまた本屋を・・・、なんて望めないご時世。かといって、私がお引っ越しすることも難しい。

 

 

 

なのでせめて、生活圏(電車で数分)の本屋さんを大切にしようと思います。本屋さんで本を買おう。

 

 

 

あなたの街には本屋さんがありますか?

 

 

 

今週末は、大好きな本屋さんに行こう。

(図書館もね!)

 

 

End.

 

 

追伸:今、紀伊国屋書店新宿本店でくすみ書房の「中学生はこれを読め!」フェアがやっているそうです!2/1~3/31まで!

この選書は、全国の中学生のために、久住さんが残した遺産みたいなものだと思います。

 

 

 

遠い国の話はあなたの隣の人の話かもしれない 〜No.1『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』〜

ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)を読みました。

www.shinchosha.co.jp

 

英国ブライトン在住、エッセイスト(兼 保育士)のブレイディみかこさん。息子さんが、カトリック系の優秀な小学校から地元の「元」底辺中学校に進学したことをきっかけに、息子氏やみかこさん自身が体験した、日常のちょっとした事件を綴ったエッセイだ。

 

この、ひときわ輝く黄色の表紙!本屋のどこに置いてあっても目立たぬわけはないのですが、どの本屋に行っても一番いい場所に置いてあるので、最初は「いわゆるアレ?出版社が沢山売りたくて、キャッチーな題名つけて表紙派手にしたやつ?」と訝しげに見つめる私。(失礼すぎる。ごめんなさい。)

で、しばらく、それこそ最初に見てから半年くらい買わず、その間に私は出産でなかなか本屋に行けなくなり、12月末に久々に大好きな本屋へ!

 

「は!まだいいところに置いてあるで、この本・・・」

 

私が信頼し申し上げる本屋さんでも、この本、かなりいいポジション取りをしていらっしゃった。ということは、相当面白い、そして本屋さんが勧めているに違いない、と思い即購入。

 

実際読み始めたのは年明けからだったのだが、

 

「何これ、面白い!」

 

と驚き、一気読み。

 

息子氏は小学校はカトリック系の優秀な学校に通っており、生徒会長にまでなった秀才だったですが、ひょんなことからカトリック系の中学校(同じく優秀)には通わず、元底辺中学校に進学します。(ちなみにどちらも公立ですが、イギリスでは公立でも学校を選択できるらしい。いいな。)

 

元底辺中学校は、成績が学区の中で底辺だったのですが、現校長先生が底辺を脱するべくいろいろな取り組みを実施した結果、底辺を脱して、近年はまあまあな成績の学校になったらしい。(だから「元」。)

 しかしやはり評判はまだあまりよろしくなく、「え、そんなところに通わせるの!?わざわざカトリックの小学校まで通わせたのに・・・。」みたいなやっかみを周囲のママから言われるわけです。(どこでもいるよね、そんなママ。)

 

カトリックの学校は裕福な家庭の子や移民の子息が多く、宗教的価値観という連帯があるのか、比較的平和な環境。

しかし、元底辺中学校は主に近隣の労働者階級の子供が通い、ほぼ英国人の均質的な世界。アイルランド人と日本人の両親を持つ息子氏はマイノリティなわけです。

 そこでは露骨に差別発言をする子がいたり、 貧困家庭の子がいたり、家庭に問題を抱えている子がいたりと、そういう意味で多様。

 

そんな環境で息子氏は、時に差別に公然と憤慨し、時に「なんであんなことするのだろう」と悩み、時に友人を心配して悶々としながら、ちょっとずつ大人の階段を上っていくのです。

 筆者はそんな息子氏に対し、過保護に接するでもなく、かといって冷たく突き放すでもなく、本人の考えを尊重しながらそっと寄り添い、淡々と考えを述べていく姿が描かれています。(この親子関係がまた良い。)

  

 

とても面白かったです。

 


そして、ちょっとした衝撃を受けました。何に衝撃を受けたかというと、イギリスの労働者階級の子供達は、小・中学生の頃からこんなにハードボイルドな日常を送っているのか!ということ。

 

自分も移民なのに他の移民の同級生に古めかしい差別用語を浴びせる子、フリーミール(貧困家庭の子供に配られる、自治体の食事補助)の制限額では空腹が満たせないので万引きに走る子、服を買うお金がなくて短い丈の制服を履いている子、破滅的な家庭環境をクリスマスソング(ラップ)にしたてる子、性的志向に迷う友達、正義の名の下に行われるいじめ、生徒の衣食住を心配し私費を投じる教員など・・・。

 

濃い学校生活だな・・・。こんなにも刺激的な思春期を過ごしているのか。という衝撃。この環境の中でも子供たちはたくましく成長していくのだろう。

 

さて、この状況はイギリスに限った話なのか、と疑問に思い調べてみた。

 

日本は日本人からすると、一見均質的に「見える」国だが、外国人の子供も増えているし(小中学校の学齢相当の、住民登録がある子どもは約12.5万人)*1、日本語の指導が必要な子どもの増加(公立の小〜高校で約4.4万人、10年前の1.7倍)*2や、外国人児童の不就学の問題*1も起こっている。

しかも、現代の日本に暮らす子どもの相対的貧困率はイギリスより高い。*3
また、ひとり親世帯の貧困率は実に50%を超え、OECD加盟国中最も高いと言われる。*4

 

この本に出てくるような差別や万引きが、日本でも頻繁に起こっていると結びつけるのはやや短絡的だと思うが、その根底にある環境、つまり子どもたちの多様性や貧困の増加は現に起こっている。

 

だから全然遠い国の話ではない。ひょっとすると隣の家で、隣のクラスで、隣の学校で、隣の町で起こっているかもしれない、起こりうる出来事なのだ。

 

そんな風に考えてみると、私たちはこの本の世界を他人事みたいに見つめることができるのだろうか。

 

 

親たちは自分の子供に、出来れば社会の暗い部分のことを知らないですくすくと育って欲しいと思うだろうし、 現に、不自由のない、恵まれた子供時代を送る子どもたちはたくさんいると思う。

 

でも、たとえ目の前で起こっていなくても、日本のどこかで起こっているかもしれない。

 

私自身も子供にはできるだけ不自由はさせたくはないが、息子には、自分が生きている世界が当たり前で「それが全て」ではないということを知っておいて欲しい。経験することがないならば、せめて想像して欲しい。そして、自分には何ができるのか考えて欲しい。

 

そういう意味でこれは子供たちに読んで欲しい本。そして、かつて子供だった大人たちに読んで欲しい本。

 

 

さすがに0歳の息子にこの本は早すぎるが、仮にこの本が学校の課題図書や道徳の時間に取り上げられることになるのだとしたら、学校の先生方は「差別やいじめはいけません。」「貧困はかわいそうですね。」みたいなありきたりな話ではなく、もっと突っ込んで、その背景や解決策について子供たちと話してみてほしい。正解はないのだ。何を話したっていいではないか。そして子供たちは、家で家族とこの本の話をしてみてほしい。

 

将来自分が息子とこの本について話すなら、息子の疑問に対してきれいごとでごまかさず、ブレイディ親子のように膝を突き合わせて率直に話し合いたい。

 

 

最後に、この本を読みながら、思い出したスピーチがある。
昨年、東京大学の学部入学式で上野千鶴子氏が贈った祝辞だ。(一部を抜粋します。)

あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。*5

 

この本を読むたびに、この上野氏の言葉が重なる。子供たちの未来に、これからの社会に、私たち大人はどんな石を積み、どんな一石を投じることができるのだろうか。

 

これから、我が家の本棚に入るこの本を、時折手にとって読むたびに、私はきっとこの宿題について考え込むことになるだろう。

 

End.

 

 

追伸:拙い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。この本は真面目な本と思われたかもしれませんが、読書という名のエンターテイメントにふさわしい、とても読み応えのある面白い本です。買ってよかった!!早く読めばよかった!!ブレイディ母のような母ちゃんになりたい!なれるかな・・・。

 

どんな本かちょっと読んでみたい、と思う方は、新潮社のホームページで4章分の全文を公開していますので、読んでみてください。

https://www.shinchosha.co.jp/ywbg/

 

4章分読んで興味を持ったあなた、ぜひ全部読んでください。ちなみに私は11章がとても好きです。

 

では!

 

【参照・引用】

*1)文部科学省 総合教育政策局 外国人の子供の就学状況等調査結果(速報)(令和元年9月27日)
https://www.mext.go.jp/content/1421568_001.pdf

*2)文部科学省 初等中等教育局外国人児童生徒等教育の現状と課題
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/todofuken_kenshu/h30_hokoku/pdf/r1408310_04.pdf

*3)OECD Family Database
http://www.oecd.org/els/soc/CO_2_2_Child_Poverty.pdf

*4)内閣府 平成26年度版 子ども・若者白書
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/b1_03_03.html

*5)平成31年東京大学学部入学式 祝辞
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

 

 

ブログを書きたくなりまして(自己紹介もかねて)

はじめまして。

 

morigaitoともうします。

 

漢字で書くと、「森垣内」です。

 

ちなみにこれは苗字ではなく、我が家の屋号みたいなものです。

 

最初の記事なので、自己紹介と、そしてなぜブログを書こうと思ったのかを書いておこうと思います。

 

 

【自己紹介】

・30代女子です。

・1児(boy 0さい)の母です。

・会社員です。(このブログを始めた時は育休中です。)

・出身は岐阜、今住んでいるのは横浜、思い出の地は神戸です。
内訳は、岐阜18年、神戸4年、横浜4年+、その他4年くらいです。

・趣味は読書、旅行(電車より飛行機派です。ローカル私鉄は好きです)、
鎌倉散歩(鎌倉のあちこちを巡る散歩。素敵なお店がたくさんありますヨ。このお話はおいおい。)、
パン作り(こねこねこねこね頑張ったあとの、焼きたての香りがたまらん。このお話もおいおい。)

・特技は料理(作るより食べるほうが好きです)

 

 【なぜブログを書こうと思ったか】

 

まず、読書が習慣になってから数年が経つのですが、本を読んでいると、そのテーマや話に出てきたちょっとしたワードから派生して、いろんなことを考えるんですよ。それこそ今晩のおかずから地球環境までいろんなことを。なのに忘れるんですね、しばらくすると。で、誰とも、それこそ家族とも話さずに消え去っていく思考が沢山あって。

なので、読後の記憶がフレッシュなうちに「この本よかったぜ!で、この本読みながらこんなこと考えたんだけど!」と言える場所が欲しいなと思ったのです。

 

 

次に、本に興味を持つ人を増やしたいなあという密かなる野望のためです。

大学生の2人に1人は1日の読書時間が0分らしい。その話を聞いた時、

えええええーと思いました。

 

ちなみにこの調査で明らかになりました。
この調査結果、じっくり読むと結構面白いが、それはまた今度。

www.univcoop.or.jp

でも、私も大学生の時は今ほど本を読んでいなかった気もするし(ゼミの本だけでお腹いっぱい。バイトも忙しかった。通学中は寝ていた。)、ふとしたきっかけで本好きになって今に至るので、そんな「ふとしたきっかけ」を増やしたいなと。

もちろん私のブログを読んで、
「この本読んでみようかな」と思ってくれたらとても嬉しいが、
ネット上に本に関する記事が1つ増える、というのだけでもいいかもしれない・・・。
ばったり出会う確率が上がるかな!(とてもハードルが低い。。。)

 

あと、これはちょっとおまけ的な理由だが、息子氏に、母はあなたが小さいころこんな本を読んで、こんなことを考えていたのですよ、と残しておいたら面白いかも?との好奇心です。実際息子が読むかどうかはわからないけど・・・。

 

 

なので、これは極めて私的なブログになるかもしれませんが、共感してくれる人がいたら幸せだなあとほんのり思っています。

 

お付き合いのほど、よろしくお願いいたします😎