本を片手に考えた、あんなことやこんなこと

本を読むことが大好きな30代女子(一児の母)の日記です。

ノムさんの三人の友 〜No.3 『「本当の才能」の引き出し方』〜

野村克也さんが亡くなった。

 

 

私にとって、物心ついた頃のプロ野球の監督といえば、

 

 

中日ドラゴンズ星野仙一監督

読売ジャイアンツ長嶋茂雄監督、

そしてヤクルトスワローズ野村克也監督だった。

 

 

当日は野球には興味がなく、ドラキチの父と祖父が見るプロ野球中継をぼーっと一緒に見るだけ。正直、子ども心には何が面白いのかわからなかったので、早くチャンネルを替えてほしかった。

 

 

それから20年ほど経って、今では年に数回、球場で野球を見るようになった。

 

 

遅ればせながら、野球の面白さを知った。

 

 

野球を球場で見始めたのは、今から2~3年前のことだが、それより少し前に、私は本屋でこの本に目をとめて、手に取っていた。(当時のメモに読了日は2015年10月8日とある。)

 

 

野村克也 著『「本当の才能」の引き出し方』

www.seishun.co.jp

 

 

いい素質を持っているのに伸び悩んでいた多くの野球選手たちを育て、才能を開花させてきた野村さんらしい、人の育て方、そして自分の磨き方が書かれている。

 

 

今、この本を引き出してまた読んでいる。

 

 

当時のドッグイヤーした箇所にはこんな文言があった。

 これもよく言う口ぐせの一つだが、「結果よりプロセスが大事」なのだ。
 いい結果に至ったプロセスが明快なら、また次もいい結果を出せる。しかし、適当なヤマカンで”当たった”結果には再現性がない。意味がないのである。

(中略)

 これは野球以外の仕事でも同じではないか。
 「結果さえ出せばいい」とばかりに、プロセスをおろそかにする風潮がないだろうか。
 しかし「なんとなく」「根拠なく」働いていたら、いくら結果を出しても、いま以上は望めない。私はそう考える。(P141-142)

 

 怒りに感情を左右されないためには、どうすればいいか?
 ”敏感さ”を磨くことだろう。
 怒りで我を忘れるのは、いわば鈍感である証拠だ。カッとなって平常心を失ったら自分の力は発揮できない。
 自分のキャリア、仲間からの信頼…‥。そうして積み上げたものを、怒りの感情は一瞬にして台無しにしてしまうことまである。
 そんな当たり前のことに気づけないのは、鈍感そのものだからである。
 では、敏感さとはどう磨けばいいのか、と言えば、それは「丁寧に仕事をする」ことしかないのではないだろうか。 (P178)

 

 自分の力を伸ばしたいと思うなら、正しい努力を続けることだ。
 目を、耳を、足を、鼻を、そして頭をどう使うのかーーーーー。
 常に正しく考えて、考えて、考え抜いて日々を歩んでいけば、ある日突然、以前とは違う景色が見えるときが、必ずくる。
 正しく握ったボールを、正しく投げれば、それは必ず伸びるのである。 (P183-184)

 

 

野村監督らしい発言。

 

 

そして私が最も印象に残ったのは、三人の友について書かれた箇所だ。

 

 何かの本で読んだ記憶があるが、人間は三人の友を持てば人生が幸福になる、という。
 一人は「人生の師となる友」。
 もう一人は「原理原則を教えてくれる友」。
 そして最後が「直言してくれる友」である。
 この三人の友が、人生を幸福にする”知恵”を授けてくれるというのだ。 

 

野村監督にとって、

「人生の師となる友」は、評論家の故・草柳大蔵さんだという。野村監督が引退して野球評論家になった際に講演の依頼が舞い込んだが、何を話せばいいかわからないと悩んだ。その際草柳さんにアドバイスをもらったという。

 

 

「原理原則を教えてくれる友」は、草柳さんから紹介されたような本、そして野球人としての経験。草柳さんからは「よき本に書かれた原理原則を学べ」と言われたという。

良書を読み、知識を積み上げれば、経験を語るにも深みが出る。または故事成語を語るにも血肉が宿る。「言葉の伝わり方が変わる」ということだ。(P132)

 

 

そしてそのあと、こう書いている。

 そして最後の友。「直言してくれる友」 だ。
 それは、いまも昔も、女房であるサッチーだろう。(P133)

 

 試合での采配はもちろん、テレビでの振る舞いまで、女房は何かと私に意見をくれる存在だ。
 もちろん、ほとんどダメ出しである。しかも歯に衣着せぬ全力の直球を投げつけて来る。荒れ球も多い。
 しかし、直言してくれる友こそ、大切にしなくてはならない存在なのだ。
 普通、人は耳に痛い話を聞きたくないが、言うほうだって言いたくないものだ。
 それを乗り越えて苦言を伝えるということは、本当に相手のことを思っていなければできないことである。
 また、耳の痛い話をされる側にとっても、「他人は何を、どう考えているか」という貴重な意見をもらえるチャンスでもあるのだ。
(P133-134) 

 

あなたには三人の友がいるだろうか。 

 

 

師と良書と幸代さんに囲まれて、野村監督の人生は幸せだっただろう。

 

 

 

ノムさんは天国でもサッチーと仲良く暮らしていきそうだ。

 

 

 

ご冥福をお祈りします。