本を片手に考えた、あんなことやこんなこと

本を読むことが大好きな30代女子(一児の母)の日記です。

本屋のある街に住みたい 〜No.2 『奇跡の本屋をつくりたい』〜

久住邦晴 著『奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの』

mishimasha.com

 

この本は今はなき書店主久住邦晴さんが、ご自身の死期を悟ったあたりから書き溜められていた遺稿をまとめたものです。 久住さんが二代目店主を務めたくすみ書房は札幌市琴似(その後大谷地に移転)にあり、2015年6月に惜しまれながら閉店。その後、「奇跡の本屋をつくりたい」と再起を目指した矢先、久住さんは病に倒れ、2017年に他界されました。

 

この本を読んだのは一昨年のことだったのですが、今なぜこの本を取り上げたかというと、

 

 

・先週の土曜日、近所の本屋で「閉店のお知らせ」を眼にする。

 

・昨日、鎌倉の松林堂書店さんの「閉店のお知らせ」ニュースを目にする。

 

 

というほんの数日の間に2つも近隣の本屋がなくなることが発覚したからです。街の本屋がなくなるニュースを目にするたびに、私は久住さんのこの本のことを思い出します。

 

 

ちなみに近隣の本屋は、私が今住んでいる街に引っ越してきた5年前は2つの本屋があったのですが、昨年の初めに1店舗なくなり、今回また1店舗なくなり、と自分の住む街に本屋がなくなることになりました。

 

 

鎌倉の松林堂書店さんは駅の東口のすぐそばにあったので、鎌倉散歩の前や帰る前に行っていました。鎌倉は昨年古書とリトルプレスの本屋さんである、books mobloさんも閉店してしまったので、一気に2店舗も減ってしまった・・・。寂しい。

 

 

 出版不況と言われて久しい日本、書店の数は20年前の半分以下。大きい書店ですら採算が取れず閉店するくらいですから、大手より資金力のない個人書店は経営が厳しいに決まっています。

 

 

久住さんの著書からも、毎月の取次への支払い、度々経験した品止め(取次から品が入ってこない、注文もできない状態)など、資金繰りの厳しさが伝わってきます。

 

 

そんな中、久住さんは売り上げを増やすため、お店を存続させるために、ユニークな取り組みをするわけです。

 

例えば、  

・売れない文庫フェア・・・いい本が多いのになぜか売れない、普通の書店では店頭に置かれもしない文庫のフェア(新潮文庫のランク下位の700点と地味だけど良書揃いのちくま文庫800点)。
新聞にも取り上げられ、その月の売上は前年の3倍を記録。その後、売れない文庫フェアは出版社を増やし、何回か開催されたとか。

 

・朗読会・・・店主自ら店内で朗読会を開催。

 

・「中学生はこれを読め!」・・・本屋の店主が中学生に勧めたい500冊と称して本を選定、札幌の書店組合の加盟店とともにフェアを開催。その後、「高校生」「小学生」シリーズにまで拡大した。

 

・ブックカフェ「ソクラテスのカフェ」・・・文芸書の古書を置いたブックカフェに、たびたびゲストを招いて文学談義を開催。その後、北大准教授の中島岳志氏(現在は東工大)との出会いを経て、大学教授を招いた「大学カフェ」開催に至る。

 

・くすみ書房友の会・・・会員制のファンクラブ。くすみ書房存続のための資金調達。特典として、店主が選書した本が年間4冊送られてくる。

 

・奇跡の本屋プロジェクト・・・全国で唯一の「中学生の本棚」と「高校生の本棚」がある本屋を作るために、クラウドファンディングを実施。見事目標額を達成した上に、多くの寄付や支援も集まったという。

 

 

 

本にはこれらの取り組みの詳細や、そこに至るご本人の思い、周囲の人とのやりとりが書かれているのですが、なにより久住さんの本や読書文化に対する愛情と信念、町の本屋としての誇りが垣間見えます。そして、その思いに共感した多くのお客さんの「この町の本屋を守りたい」という思いが伝わってきて泣けてきます。

くすみ書房に行ったことがないのが、なにより悔やまれます。

 

 

 

 

以前から常々「自分の住む町に本屋さんがあるということが大事」と思っていました。

 

 

本屋さんがあれば、大人から子供まで気軽に、意図せず自分の知らない世界に触れられる。これはインターネットの書店ではなかなか難しいことです。リアル店舗の強みです。

 

 

それに本屋さんや図書館が歩いて行ける距離にある街は、読書文化も育ちます。悩んだ時、行き詰まった時、ちょっと本を探しに行こう、とできるから。息抜きに、休日の楽しみに、ぶらりと立ち寄れるから。

 

 

 

本には奇跡を起こす力があります。

そのためには、ピンチになっても逃げたりあきらめないで、そのピンチに向きあい、どうすれば勝てるか考え、そして行動することです。

その行動のひとつに読書があるわけです。

「本にはすべての答えがあります」

 

皆さん方に本とのすばらしい出会いがあることを祈っております。

(本の中の久住さんの言葉)

 

 

やっぱり、できれば本屋さんのある街に住みたい。本屋さんのある街で子育てをしたい。

 

 

 

この3月で、私の住む街から本屋がなくなります。その後のテナントにまた本屋を・・・、なんて望めないご時世。かといって、私がお引っ越しすることも難しい。

 

 

 

なのでせめて、生活圏(電車で数分)の本屋さんを大切にしようと思います。本屋さんで本を買おう。

 

 

 

あなたの街には本屋さんがありますか?

 

 

 

今週末は、大好きな本屋さんに行こう。

(図書館もね!)

 

 

End.

 

 

追伸:今、紀伊国屋書店新宿本店でくすみ書房の「中学生はこれを読め!」フェアがやっているそうです!2/1~3/31まで!

この選書は、全国の中学生のために、久住さんが残した遺産みたいなものだと思います。